2019-07-4

買取制度終了の日経記事


6月12日の日経記事「買取制度終了」が話題を呼んでいる。
銀行担当者や顧客のみならず専門外の人からも問い合わせが多数あった。
この記事の反響としては大きく分けて2つある。

一つは、認定済みの発電事業まで契約履行されないのではないかというもの。
つまり、決まった単価で20年の売電を行っている認定済・接続契約済みのものが予定通り進められなくなるというもの。
しかしこれは、過剰な反応で、根も葉もないもの。実際の日経記事もこのような趣旨ではない。
しかし、新聞記事は不安をあおる要素があるので、「そうはいっても絶対ないとは言い切れないでしょ」
と銀行の融資担当の過剰を招くことにもなっている。
確かに、再エネ特措法の変更で、認定済み・接続契約済みが履行されない改正というのは、
絶対ないとは言い切れない。しかし、それをやってしまうと、国の法制度に対する信頼を失うことになり、
今後のあらゆる制度に対するリスクとなり、(特に金融機関の融資等での)潜在的な経済損失も計り知れないため、
絶対ないとは言えないが限りなく考えにくい事態だ。

もう一つは、今後の市場動向に対する懸念。
この記事の趣旨は、固定価格買取制度が来年以降無くなる予定、というもので、
ソースが明記されていないが、省庁の官僚が記者クラブに情報提供したようなものだと思われるので、
実際にその通りになることが多い(例年の「来年の買取価格」然り、昨年の入札制度の記事しかり)。

ここで問題になるのが、「買取制度終了」をどうとらえるかである。
固定価格買取制度が終了する、というのは再エネ普及や、再エネ市場としてみたとき、
ポジティブにもネガティブにもとらえられる。


そもそも買取制度は何を目的として始まったか。
国は再エネを普及させたい。これは様々な理由によるが、エネルギー安全保障の視点、
化石燃料依存度を減らす温暖化対策という視点、事故リスクのある原発依存から脱却するという視点、
経済的合理性(エネルギーコストを下げて産業競争力に資する等)という視点からである。

再生可能エネルギーは、これらの視点から見た時合理性があるため、エネルギー比率として、
国は長期的に比率を上げていきたい。

しかしながら、再生可能エネルギーは、コストが高く、産業として未熟な黎明期には、自由競争の原理では普及しにくい。
こうした状況ではパネルメーカー等、供給業者の数も少なく、経済的なメリットも少ないので需要も少ないため十分な競争が起きない。
競争が起きないため、いつまでたっても価格が下がらず、産業が育たない。

そのため、再エネ特措法により、国の制度的後押しを行うことで、
競争を促し、結果的に市場原理だけで産業がなりたつようにする、
ざっくりいうとこれが買取制度の趣旨である。


※固定価格買取制度は、あまり知られていないが、回避可能費用と補助金相当部分で成り立っている。
買取制度の元で、電力会社は発電事業者の電気を買い取る義務がでるが、
実際には、(例えば36円/kwh等の)買取費用を全て負担しているわけではなく、
「太陽光や風力等の発電を買い取っていなければ、供給していた主な電源(火力や水力や原子力)
の発電コスト相当部分を負担しているだけである。これらは元々発生したコスト(回避可能費用)なので
電力会社は損はしない。買取単価から回避可能費用を引いた部分は、「再エネ賦課金」として、
一般家庭等需要家が幅広く負担する。


買取制度が終了、というのは、再エネ特措法の目的を果たしたからではないか、というのが
制度の趣旨からの見方だが、これが妥当しているかどうかの一つの視点は、
競争が働き、設備コストが下がったかどうかである。そして、実際に設備のコストは
制度開始時点から他の産業では考えられない比率で下がっている。
例えば、パネルの単価は、70~80%下がっている(弊社調達ベース)。

つまり100円のものが5~6年の間に20~30円になったということで、

信じられない値下がりペースである。


※設備のコストと考えた時、本来は統計データを根拠とすべきであるが、買取制度に関しては必ずしも統計データは実際のコストを反映しない。
エネ庁では、再エネ事業者に費用報告を義務付けているが、これらのデータに基づく平均コストは、設置業者が実際に材料調達するコストを十分に反映していない。
それは、買取制度は、投資商品化されやすいため、他の投資手段(投資用マンションや金融商品)に対して優位性があれば、
販売可能な価格で高止まりしてしまうからだ。これは、古い買取単価(40円や36円等)程当てはまる。
その結果「市場で販売できる相場ー実際にかかるコスト」の利益がが権利ホルダー関係者のところに集中してしまう(買取制度の最も大きな問題の一つだ)。
この場合、「最終事業者が要したコスト」のデータをいくら収集したところで、「市場で販売できる相場」を集めているのと同じことになってしまう。


実際に、コストが急激な勢いで下がっていることは、太陽電池メーカーから直接調達し続ける弊社のような業者には明らかで、疑う余地がない。
設備材料の中でも、特に太陽電池は技術障壁が低く、人件費の依存度が高いため、
中国メーカーの競争力が高くなる。メーカーの数も多いため、競争原理でほっておいても価格が下がっていく。
これは自由競争の経済を絵にかいたような図式である。
供給側にとってはレッドオーシャンそのもので、生き残るのが厳しい世界(固定費を埋めるための値段のたたき合い)だが、
需要側にとってはありがたい事態だ。そしてこの競争をきっかけを与えたのが、
まさに買取制度なので、制度の趣旨に非常に合致している。


買取制度が終了する、というのはこうした背景でのことなので、
目的を果たしたので、国の制度的な補助が必要ない位に価格が低減したので買取制度を終了させる、というのが正しい見方だ。

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